スクラブとはあまり知られていない言葉でしっくりこないと感じる人が多いと思います。簡単に言うと、医療現場で働く人たちが着る白衣のことです。スクラブはどのようにして生まれたのか、外国からの流れや日本に来るまで、さらには日本の病院における使用例やどのような種類のスクラブがあるのかなどを分かりやすく解説していきます。
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スクラブとは何か?
スクラブは医師や看護師などの医療従事者が着用する医療用白衣です。関連サイト⇒制服白衣
半袖で首元はVネックになっています。英語の「scrub」は日本語に訳すと、ごしごし洗うという意味があります。
スクラブが取り入れられたのは?
スクラブの原点となったのはナース服です。ナイチンゲールが1854年のクリミア戦争で負傷した兵士の看護にあたったことがスクラブの誕生する原点となります。日本では看護師の養成が1885年に始まりました。長いスカート丈に上着をきちんと着用し、当時としては珍しく洋装でした。
日本は第2次世界大戦後、白のワンピースの白衣が全国に広がりましたが、その後少しずつ改良が進み、パンツスタイルのものも出てきます。1980年代に入ると、機能性やデザイン性に合わせた商品が多く出るようになりました。
スクラブは1990年代にアメリカの小児科で始めて取り入れられました。当時のアメリカではナース服は患者に対して医療的な印象を与えて不安や恐怖を高めているのではないかと批判が高まっていた時期でした。そこで、患者が緊張なく、明るい雰囲気で診察できる環境を目指してスクラブを導入しました。
この動きからほとんどの病院でスクラブが受け入れられるようになり、医療用ユニフォームとして定着され始めてきました。アメリカでは医師だけでなく医学生もスクラブを愛用しています。白衣やカッターシャツは動きにくく、機能的ではないという意見があるようで、アメリカの医療現場やドクターにとってスクラブはなくてはならないものです。
チームで患者を診察するため、仕事をする際にはスクラブの色が決まっていることがあります。スクラブには病院名や専門家、役職などが記されています。日本でもカラフルな柄物スクラブやパンツスタイルなど、患者のことを考えた新しい病院の雰囲気作りが少しずつ行われるようになり始めてきました。
スクラブの特徴
スクラブは元々手術着で、下はパンツになっています。素材は薄く頑丈なものが使われていて、洗う際に強く洗っても生地が傷みにくい性質です。白衣を着た医師や看護師がいると、きっちりとしたイメージがあって緊張してしまうこともありますが、スクラブは白衣に比べて患者に親近感を与える効果をもっているため、スクラブを着けた医師や看護師が傍にいれば患者がリラックスして落ち着いて診察を受けることができます。
また、デザインはゆとりがあるものになっているため、病院で介助や注射など多くの動きを必要とする看護師にとって、白衣を着ている時と比べて軽くて動きやすく簡単に着脱できるスクラブはメリットが多く、最適な衣服といえるでしょう。
スクラブを選ぶ際には
スクラブは選ぶのが楽しいと思えるほど、たくさんの色が用意されています。ポイントは印象を良くしたり、親しみを持てる明るい色を選ぶと良いでしょう。例えばターコイズは冷静なイメージを与えますし、ピンクは可愛いイメージを与えます。
ネイビーは深みがあり落ち着いているイメージだけでなく、汚れが目立ちにくいです。色のほかにビジュアルや動きやすさを考慮して選ぶのがおすすめです。
小児科ではどのようなスクラブがいい?
スクラブはビジュアルや動きやすさ、色などを考えて選んだほうがいいという話をしましたが、子どもの集まる小児病棟ではちょっとした工夫が必要になります。診察時に子どもが不安な気持ちにならないようにしたり、病院は怖い場所というイメージをもたせないようにします。
また子どもが診察時に泣いてしまうと、診察時に分かる情報量が落ちてしまいます。そこで、子どもに元気を与えられそうなものや温かみのある色を選ぶことがポイントです。ミッフィーやアンパンマン、ポケットモンスターなど子どもが好きなキャラクターのデザインがプリントアウトされたものやポップなものや花柄や動物などが描かれているものなど豊富な種類が販売されています。
中にはキャラクターのワッペンが付いているものや、胸元や袖にロゴやキャラクターの刺繍が入っているものなどもあります。スクラブの中には都道府県のマスコットキャラクターがデザインされているものもあります。熊本県のご当地キャラクター「くまモン」の刺繍が入っているスクラブの色は7色。
また、千葉県の形をした「チーバくん」は聴診器を持っています。どちらも診察における子どもの緊張を和らげて、子どもたちとの会話に繋がる工夫が施されています。柄物のスクラブは高いリラックス効果をもたらすでしょう。
アメリカでは10年以上前から取り入れられ、日本の病院でも柄物スクラブを使用する病院が少しずつ増えています。ある小児科では院長自ら、キャラクターの刺繍が入ったスクラブを着用して診察に当たっています。受付や看護師など全員が子供に親しみのあるスクラブを着用しているこのクリニックでは、来院される人が居心地の良い雰囲気となる院内環境づくりに努めています。
小児科を担当していれば、通院に来る子どものことを思い出しながら選ぶのも良いでしょう。先生や看護師さんの着ているスクラブを見て喜ぶだけでなく、頑張って診察を受けようと思ってくれるはずです。
ドラマでスクラブが使われている例
日本のドラマでスクラブが着用されたのは1999年に放送された救命病棟24時で、江口洋介さん演じる進藤一生や松嶋菜々子さん演じる小島楓がスクラブを着用していました。2018年7月に放送された山崎賢人さん主演のグッド・ドクターでもスクラブが使われましたが、浜野謙太さん演じる小児外科に勤める看護師・橋口太郎のスクラブは、カバやキリンなどが印刷されている動物柄のものでした。
医療現場で使わているスクラブの工夫
医療従事者が着用するスクラブはナイチンゲールの登場を機に、アメリカの小児科で取り入れられたことをきっかけとして現在に至ります。患者のことを第一に考えつつ、多忙な医療現場の環境をポジティブなものにするための工夫をしています。
温かい雰囲気や色、キャラクターなどの親しみをもたせるスクラブは病院に来る人の気持ちを和らげてくれるアイテムです。